Bookshareは、視覚障害その他の理由で通常の印刷物を読むことができないプリントディスアビリティのある人にアクセシブルなコンテンツを提供するオンライン図書館です。非営利の社会的企業Benetech社が2002年に立ち上げたもので、プリントディスアビリティのある人を対象としたオンライン図書館としては世界最大のものです。
誰が利用できるのか
米国の著作権法の権利制限規定またはそれにならって権利者から得た許諾に基づいてコンテンツを製作・収集・提供しているため、利用できるのは、プリントディスアビリティとしてBookshareに会員登録した人に限定されます。具体的には、視覚障害、肢体不自由などの理由でページをめくれない等の身体障害、読書に困難のある学習障害のある障害者で、専門家によってそれを証明してもらう必要があります。
会費は個人会員であれば、基本的に入会費25ドル年会費50ドルですが、ユーザーの身分によって無料になったり、ユーザーがいる国によってディスカウントされることもあります。
プリントディスアビリティがあることの証明のところで、ハードルが高くなりますが、海外の人間でもプリントディスアビリティがあることが証明可能であれば、登録することが可能です。
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利用できるコンテンツ
Bookshareは2015年7月24日現在で約35万点のアクセシブルなコンテンツを提供しています。
ダウンロードして利用できるコンテンツの形式は以下のとおりで、ソースとなるテキストデータから自動的にユーザーが選択したいずれかの形式に変換されてダウンロードできるようになっているようです。
- テキストDAISY(DAISY3)
- 音声DAISY(DAISY3。合成音声によって読み上げた音声データを格納したDAISY)
- 音声データ(MP3形式。合成音声によって読み上げた音声データ)
- 点字データ(BRF形式)
35万点のコンテンツのソースは以下の通りです。Bookshareといえば、米国の著作権法の権利制限規定に基づいてボランティアが紙の印刷物をスキャニング・OCR処理して作成したものが有名ですが、現在では、全体から見れば一部にすぎず、出版社から直接提供を受けるデータの方が数としては多くなっています。
ボランティアによる製作
ユーザーからの製作のリクエストを受けて、ボランティアが製作したテキストデータで、米国の著作権法の制限規定に基づいて製作しています。音楽共有サービスNapsterにヒントを得て、図書をスキャニングしたデータを合法的に共有できたらよいのではないかというところからフルックターマンは、Bookshareを着想したと言われているそうで、Bookshareが2002年に立ち上がった当初から現在に至るまで行われています。
製作フローは1人のボランティアが紙の書籍をスキャニング・OCR処理を行い、別のボランティアがそれをテキスト校正するという製作フローになっており、リクエストを受けてから数週間から数ヶ月で完成するそうです。
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出版社から提供を受けたデータ
出版社からもデータの提供を受けています。現在は、500以上の出版社からデータの提供を受けており、Bookshareが提供する35万点のうち、2/3は出版社からデータの提供を受けたコンテンツではないかと思います。
出版社から提供を受けているフォーマットはEPUB 2とEPUB3で、PDFは現在、受け付けていません。メタデータは、ONIX2かExcelによって提供を受けているとのこと。
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著者から提供を受けたデータ
著者からのデータ提供も受け付けています。これまで数百の著者から直接データの提供を受けたそうです。受け付けるファイル形式はEPUB 2、EPUB 3、Word及びRTFで、紙版の書籍とPDF版による提供は受け付けていないとのこと。
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初等・中等教育の教科書
Bookshareの存在を際だたせているもう1つのコンテンツがこの初等・中等教育の教科書データの提供です。
米国では、個別障害者教育法(IDEA 2004)により、教科書の購入者である州や地方教育局の求めに応じて教科書出版社は教科書などの教材のデータをNIMAS(National Instructional Materials Accessibility Standard)というフォーマットで提出することが義務づけられています。Bookshareは、このNIMASファイルを元にテキストDAISYを作成して障害児に提供しています。米国教育省のOSEP(Office of Special Education Programs)から資金援助をうけて、無償で提供しています。
また、Bookshareは紙の教科書を裁断して、スキャニングしてテキストDAISY化もしています。
詳細は、参考に挙げた近藤武夫先生の論文に詳しいので、そちらをご参照ください。
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大学からアップロードされたデータ(University Partner Program)
読書障害のある大学生支援を目的に、各大学が障害学生のためにスキャニングして製作した教科書などのテキストデータを収集しています。2015年7月24日現在で35校の大学がこのプログラムに参加しています。各大学は、Bookshareのボランティアマニュアルにしたがって教材をスキャニング・OCR処理をしてテキストデータを製作し、RTF形式でアップロードします。ただし、ボランティアが製作したものと異なり、大学がアップロードしたものの場合は、テキスト校正のフローが省略され、すぐに提供に回すことができます。
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NFB-NEWSLINEの雑誌・新聞
National Federation of the Blind(NFB)の新聞・雑誌の音声提供サービスNFB-NEWSLINEと提携してNFB-NEWSLINEのコンテンツを利用できるようになっています。
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コンテンツの利用方法
Bookshareはウェブサイトから直接閲覧することができるブラウザベースの閲覧システムBookshare Web Readerを提供しているほか、
Bookshareのウェブサイトで一覧されているように、デスクトップPC上のアプリケーションや、タブレット端末・スマートフォン端末用のアプリケーションやハードウェアデバイス(再生機器)で利用することが可能です。中にはBookshareのウェブサイトを訪問してコンテンツをダウンロードしなくても、ソフトウェア、デバイス上でBookshareのコンテンツを直接ダウンロードできるものもあります。
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Bookshareを運営するBenetchとは
Benetechはテクノロジーの力で世界をより良くしていこうと、人権、リテラシー、環境をテーマに取り組んでいる非営利の社会的企業です。ジム・フルックターマン(Jim Fruchterman)氏が立ち上げたもので、前身となるArkenstone社のプロダクトラインを2000年に他の企業に売却し、社の名前をBenetechに、組織形態を非営利の社会的企業に改めて生まれた企業です。なお、Arkenstone社は、視覚障害者向けのOCRソフトウェアを開発していた企業で、それを用いた音声読書システム(スキャナとOCRソフトウェアで紙の資料をテキスト化し、合成音声で読み上げるシステム)が1990年代に60カ国で3万5千台販売されたそうです。
Bookshareは、Benetechが進めるGlobal Literacy Programの1つで、同プログラムの下には、他にアクセシビリティに関する標準化やツールの研究・開発を行うDIAGRAM Centerや、大人の読み書き能力の向上を目的としたリテラシー教育プロジェクトRoute 66 Literacyがあります。
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