OPDS(Open Publication Distribution System)に関する私のブログのエントリとその他関係ありそうなサイトのまとめ

 ここ最近、コミュニティがあまり活発でなかったOPDS(Open Publication Distribution System)ですが、日本でにわかに活気づいてきました。
 そのきっかけ、というか要因は明らかにEPUBのエヴァンジェリストである@lost_and_found さんが「いろんな場所で公私混同しまくってOPDSを連呼してゆく」と宣言して、OPDSのエヴァンジェリストに華麗に転生されたおかげです。
「電子書籍元年」から3年目に考えていること – 電書ちゃんねる
 
 そんなこんなでOPDSのツィート数もかなり増え、華麗なるエヴァンジェリスト@lost_and_found さんの手によって、OPDSについて日本語で議論するグループがfacebook内にローンチされたということで、議論の肥やしになればとの一心で過去に他のブログ(e-chuban blog)でOPDSについて書いたエントリをまとめてみました。肥やしだけでも何なので、自分のブログよりもずっと有用な他のサイトへのリンクも紹介します。 
 
 

1. OPDSの概要とOPDSで実現できそうなこと

  OPDSの概要とそれによって実現できそうなことを書いています。このときは妄想として書きましたが、できるっぽいです。
OPDS(Open Publication Distribution System)はこんなことができる仕組みだろうか | e-chuban blog(2011/01/07)
 
 ちなみに@lost_and_found さんがOPDSのドキュメント類を現在がしがし翻訳してくださっているようで、概要を知るにはこちらのほうがわかりやすいかもしれません。
About opds-ja
http://lostandfound.github.com/opds-ja/
 

2. 仕様

 最新版はver1.1です。
OPDS Catalog 1.1
http://opds-spec.org/specs/opds-catalog-1-1
 もうすぐver 1.2も公開されるそうで、ドラフトがすでに公開されています。
Draft of version 1.2 of the OPDS Catalog specification
http://code.google.com/p/openpub/wiki/CatalogSpecDraft
 ver 1.0 の仕様については私が翻訳した日本語訳があります。ver 1.1やver 1.2と大きな違いはないようですので、参考にはなるかと思います。
Open Publication Distribution System (OPDS) カタログフォーマット ver. 1.0 仕様書(日本語訳)
http://www.kzakza.com/opds/opds1_0_jpn.html
 
 

3. 台湾

 コミュニティが活発でない状況下で例外的な存在が台湾です。政府の後押しをうけてメタデータの交換技術としてOPDSの導入が積極的に進められているようです。本家を差し置いて、OPDSの理想を追求しているのではないかと思えるくらい。
 台湾で電子書籍に関する技術の標準化を進めている電子閱讀產業推動聯盟(e-Reading Industory Promotion Alliance)が2011年3月16日に「電子書平台與電子書閱讀器之傳輸協定互通標準_v1.0」を公開しました。OPDS、OpenSearch、Open IDなどを利用し、プラットフォームの枠を超えた電子書籍の流通の標準化を志向しています。私が思い描いていたOPDSの利用法にかなり近いイメージだったので、これを見つけたときは結構興奮しました。
台湾で電子書籍の流通の標準化を狙った仕様「電子書平台與電子書閱讀器之傳輸協定互通標準ver.1.0」が公開された | e-chuban blog(2011/04/02)
 この文書を見つけた時にはどういう背景で公開されたものなのかがよくわかりませんでしたが、台湾政府の経済部(日本の経済産業省にあたたる行政官庁)が進めている「智慧生活應用推動計畫(知的生活応用推進計画)」の中で作成されたものらしいということが判明しました。本気なんだと。
電子書籍の利用拡大と流通の標準化を目指す台湾の「智慧生活應用推動計畫(知的生活応用推進計画)」 | e-chuban blog(2011/09/23)
 そういう状況下の台湾の流れの1つなのでしょうが、中華電子佛典協會がなんと仏典の叢書である漢文大蔵経のOPDSカタログを公開しています。ここは仏典のEPUBを作ったことにもっと驚くべきところですが。
台湾で漢文大蔵経のEPUB版が公開されている。OPDSカタログも公開。 | e-chuban blog(2011/10/06)
 ちなみに台湾ではすくなくとも2010年12月にはOPDSの利用が検討されていたようです。早っ!
台湾でOPDS(Open Publication Distribution System)が普及するかもしれない | e-chuban blog(2011/01/08)
 
  

4. 米国

・Internet Archive

 まずはInternet Archive関係のエントリから。
Internet ArchiveのOPDS(Open Publishing Distribution System)カタログ | e-chuban blog(2011/06/09)
Open LibraryがOPDS(Open Publication Distribution System)のサポートを実験的に開始。 | e-chuban blog(2011/03/03)
 

・その他

 以下にOPDSカタログを公開している出版社が掲載されています。
MobileRead Wiki – OPDS
 上に掲載されていますが、OPDSの仕様策定の中心的人物であるHadrien Gardeur(@Hadrien)氏のFeedbooksは敬意を表してここでも紹介しておきます。ちなみにOPDSの最新動向はこの方のツィートを追っていくのがお勧めです。
Feedbooks | Free eBooks for Android & iPhone/iPad
 出版社ではO’Reilly がOPDSカタログを公開しています。
 上に掲載されていない出版社ではO’Reilly がOPDSカタログを公開していましたが、更新が2010年で止まってしまっているようです。残念・・・。
O’Reilly Media
http://opds.oreilly.com/opds/
 
※2012/02/26追記
後で改めて確認したらばりばり現役でした。すいませんでした > < 
 

5. 日本

 日本ではどうだ、ということですが、出版社では達人出版社さんが公開されています。昨日、公開しているOPDSのバージョンを1.0から1.1に上げたばかりです。
OPDSを改良して1.1対応にしました – 達人出版会日記(2012-02-23)
OPDSはじめました – 達人出版会日記(2011-01-18)
 シナジーソフトウァアさんが運営するEPUB投稿、共有サイトのePubs.jpでもOPDSカタログが公開されています。
ePubs.jp(フッター部分にOPDSヘのリンクがある)
  その他、青空文庫が公開している書誌CSVの拡張版を利用した青空文庫OPDSカタログを公開してています。
青空文庫OPDSフィード « 潮流工房(2011/02/20)
 

【おまけ】バッドノウハウとしてのOPDSのPodcast配信

 iTunesはOPDSに対応していないので、少なくともそのままではPodcast配信はできない。しかし、以下で紹介しているように”enclosure”の値を持つrel属性のlink要素を組み込めばできるかもしれません(昔、試したことなのでちょっと自信なし)。出来たとしてもAcquisition Linkと重複するわけなので、バッドノウハウ以上のものではないのですが、AppleがiTunesをOPDSに対応させる可能性の低さを考えると1つの選択肢になるかも。
 
OPDS(Open Publication Distribution System)を使って今からでもPodcast配信できるかもしれない。 | e-chuban blog
 

では、このあたりで

今後、純粋にOPDSに関する話はこのブログで公開していく予定です。中国語圏のOPDSという話なら、中国語圏の出版・図書館事情を主題とするもう1つのブログ、e-chuban blogで公開します。 
 
 

曖昧になるWebコンテンツと「書籍」コンテンツの境界 – HTML5電子書籍余話 その2 –

 当初、このエントリは「Webサイト化する電子書籍– HTML5電子書籍(2) -」のまとめとして書いていたものだったのですが、いつものように長くなってしまったので、エントリを独立させました。
 

1.前回のエントリをうけて

 というわけで前回のエントリでは「Webサイト化した電子書籍」と「電子書籍的UI」を付与する方法について紹介してきました。あのエントリをお読みいただいた方の中には以下のような疑問を抱いた方もいるのではないかと思います。
 
 従来のWebサイトとWebサイト化した電子書籍を区別する必要はあるのか。
  
 コンテンツの由来が紙の「書籍」由来であろうとWebオリジナルであろうとWebサイトとしては同じではないか、「電子書籍的UI」はデザイン上の些細な違いでしかない。そうお考えの方もいらっしゃるだろうと思います。
  正直、意見が分かれるところだと思いますが、私自身は後で述べる理由で少なくとも紙の出版物が消滅するということでもない限りは、今後もある程度区別はされていくと考えています。しかし、WebとWebサイト化した「書籍」コンテンツがビュワーとして同じようなデバイスとブラウザを共有している以上、その違いはこれまでのWebと「書籍」のような絶対的なものではなくなり、相対的なものになっていくだろうも考えています。 
 
 

2. Webコンテンツと電子書籍の共通する大前提

 Webコンテンツもリフロー型電子書籍(Webサイト化したものに限らず)は以下のような様々なサイズのデバイスに対応しなければなりません。
デスクトップ、タブレット、スマートフォンの図
 
 Webコンテンツや「書籍」コンテンツがどれほど優れたデザインをしていようと、読者が読むデバイスで読みづらかったらその読者にとってその「優れたデザイン」は何も意味はありません。「Web」や「書籍」というコンテンツそのもののデザインを論じる前に、その読まれるデバイスへの最適化するためのUIを考慮する必要があります。つまり、デバイスのインターフェイスを無視したコンテンツのUIはありえないということですが、言い換えると
 
  デバイスのインターフェイスがコンテンツのUIを規定する。 
 とも言えます。これが大前提です。
 Webコンテンツとリフロー型電子書籍の場合は、特定のデバイスのインターフェイスの制約に規定されるのでなく、様々なスクリーンサイズのデバイスのインターフェイスに対応しなければならないという制約がコンテンツのUIを規定することになります。
 
 同じ制約のもとで読みやすいUIを追求していく限り、Webコンテンツも「書籍」コンテンツも似たUIを持つ可能性はあります。Webサイト化した電子書籍はデバイスだけではなく、Webブラウザというビュワーまで同じくするのですからなおさらです。
 
 

3. 「電子書籍的UI」の意義

 では、Webコンテンツと「書籍」コンテンツは同じデバイス上で読まれる限りは同義ではないかと言われてしまいそうですが、
  Webコンテンツと「書籍」コンテンツは長さが違う。 
  
  ということで、他にもいろいろと違いはあるのですが、端的にいえば、長さという点で大きく異なります。
 
 「書籍」というコンテンツは100頁強の量でも少ない部類に入りますが、Webコンテンツは紙に打ち出せば、A4で数頁で収まるものが主流です。WebコンテンツのUI(Webデザイン)は大雑把にいえば、そのA4で数頁という長さに最適化するためにこれまで試行錯誤してきたわけです(もちろんそれだけではないですけど)。同じデバイス上で読むとはいえ、WebコンテンツのUIに「書籍」コンテンツにそのまま適用するわけにはいきません。
 将来の有り様はわかりませんが、現在の「書籍」コンテンツには長いコンテンツを読むことに集中できるUIが求められています。「Webサイト化した電子書籍」に「電子書籍的UI」というものを付与する意味があるとすれば、そこにこそ意味があるのだと思いますし、Webコンテンツと「書籍」コンテンツを分かつものだと思います。つまりは、長いコンテンツを読むのに適したUIが「電子書籍的UI」なのであって、必ずしもページめくりのエフェクトが必要だとか具体的なUIを指しているわけではありません。長いコンテンツを読むのに適したUIはコンテンツごとに異なってくるわけですから。
 
 「書籍」コンテンツが100頁強でも短いとされるのはその前提として「紙の書籍」が存在するからです。同じコンテンツが紙版と電子版で刊行という次元の話ではなく、紙の書籍という存在そのものが比較の対象として「書籍」コンテンツの長さをある程度規定している。50頁や100頁の「書籍」コンテンツは読者に「短い」と感じさせ続けるわけです。
  

4. 曖昧になるWebコンテンツと「書籍」コンテンツの境界

 とはいえ、Webコンテンツと「書籍」コンテンツの違いは絶対的なものではなく、相対的な違いではしかないと思います。ここでは、長さを1つの基準にしましたが、「書籍」コンテンツの影響を受けて「長くなるWebコンテンツ」が出てくるでしょうし、もちろんWebコンテンツの影響をうけて「短くなる書籍」コンテンツもでてくるでしょう。Webコンテンツと「書籍」コンテンツの境界線はどんどんあいまいになっていくことになります。
 従来のWebコンテンツと比較すると長い過ぎる、しかし、「書籍」コンテンツと比較すると短いと思えるWebと「書籍」の中間に位置するような、Webとも「書籍」ともカテゴライズできないコンテンツがでてくることに私自身は期待もしているのです。これについては一度以下のエントリで詳しく書いたことがあります。
「書籍」と呼ぶには短い電子書籍というコンテンツと従来よりちょっと長くなったWebというコンテンツの相対的な関係
 

【おまけ】ここであまり書かなかったこと

 このエントリでは「電子書籍的UI」の付与の仕方とその意義については述べましたが、「電子書籍的UI」についてはほとんど言及しませんでした。すでに長いこのエントリがさらに長くなるからというのが主な理由ですが、過去のエントリでも一度書いたことがあります。この長いエントリを読んだ後でもさらに読んでやろうという奇特な方がいらっしゃったら、一度お読みいただけると幸いです。
ぼくのかんがえる電子書籍リーダーのUI : 紙の書籍のUIを真似ただけでは足りなくて