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カテゴリー: アクセシビリティ

アクセシビリティメタデータを提供する、ということ(その2)

2018-12-12 kzakza

 一年前に書いたアクセシビリティメタデータを提供する、ということの続きを今になってなんとなく書いてみます。問題意識は1年前から変わっていませんが、このエントリでも書いた「だれでもない、自分が今、読むことができるコンテンツを探せる」メタデータのあり方についてもう少し考えてみたい。

 アクセシビリティメタデータの1つとして、その資料、データ、コンテンツがどのようなアクセシビリティ上の措置がなされているかという情報があります。たとえば、以下のようなものです。

  • 代替テキストが提供されている
  • 読み上げ対応している
  • バリアフリー対応の字幕や音声ガイドがついている

 これについては、表に出る形ではアマゾンが頑張っています。

  • アマゾンがKindleの読み上げ可否についてメタデータを提供するようになっている
  • アマゾンがバリアフリーDVD/Blu-Rayのコレクションを追加

 どのようなアクセシビリティ上の措置がなされているという情報がメタデータとして提供される動きが出てきていることは、本当に歓迎しています。ただ、この情報の意味するところを理解し自分が使える/使えないコンテンツだと、ユーザー側で判断するのは、まだ1つ大きな山があるように感じています。そこで、アクセシビリティ上の措置がメタデータとして提供される動きがでてくるようになったので、さらにもう1歩踏み込んで、そのアクセシビリティ上の措置の結果としてどのような人がこのコンテンツを利用できるのかという情報もメタデータとして提供することについても考えてみたい。つまり、例えば、

  • 「バリアフリー字幕:日本語」の結果、視覚機能を持ち(つまり、視覚障害ではない)かつ日本語を利用できる方が利用できる
  • 「バリアフリー音声ガイド:日本語」の結果、聴覚機能を持ち(つまり、聴覚障害ではない)かつ日本語を利用できる方が利用できる
  • つまり、「バリアフリー字幕:日本語」と「バリアフリー音声ガイド:日本語の両方を備えたDVDの場合、そのDVDは以下の方が利用できることなる
    • 日本語を利用できる方であり、かつ
    • 視覚機能または聴覚機能の少なくともいずれかを持っている方

こういう情報までメタデータとして提供することはできないかと。

 すでにこれを目的とするメタデータの語彙がSchema.org にあります。以下の2つの語彙です。

  • accessMode (そのコンテンツが製作されたままの状態で正確に理解するに必要な人間の機能を明示する語彙)
  • accessModeSufficient (代替テキスト、音声ガイド等の追加されたアクセシリティ機能を考慮した上でそのコンテンツの内容を利用するのに必要な人間の機能を示す語彙)

 それぞれの語彙の詳細については、EPUBのアクセシビリティ仕様が求めるアクセシビリティメタデータでも書きましたので、詳しくはそちらを参照してください。このエントリにも書いたてあるとおり、EPUBのアクセシビリティ仕様EPUB Accessibility 1.0でもEPUBに同梱すべきアクセシビリティメタデータとして採用されています(これがEPUB Accessibility 1.0を推したい理由の1つでもあります)。

 図書館の話。図書館では、資料についてなされたアクセシビリティ上の措置についてさえも、メタデータとして提供することは実は十分にされていません(少なくとも私はそう認識。注記にその種の情報が書かれることもあるはあるのですが、自由記述の注記欄だけに、その対応も一律ではなかったり、記述が統一されていないような)。代わりに図書館の障害者サービスでは、多くの場合、点字資料、録音図書、拡大図書、LLブックといった障害者向け資料の区分で、資料種別単位で管理することで障害者サービスにおいて資料提供をしています。前のエントリでも書いたように、自分の障害の特性を自覚かつ理解し、かつ、点字資料、録音図書、拡大図書、マルチメディアDAISYのような資料の特徴の理解した上で資料のジャンルから、自分が利用できるもの選ぶと利用者自身で行うことはかなり難しいと思います。場合によって図書館司書の介在が必要になってしまいます。

 しかし、ここ最近の図書館の動きで「おおぉ」と思ったのが、昨年のエントリで紹介したMARC21に上のアクセシビリティメタデータを追加する提案に関する動きの続報です。2017年から2018年の議論の結果、11月にMARC21の341のフィールドと532のフィールドにアクセシビリティに関する項目が追加されました。

  • MARC 21 Format for Bibliographic Data: Appendix G: Format Changes (Network Development and MARC Standards Office, Library of Congress)

 これは別のエントリで少し詳しく書きますが、341のフィールドでaccessModeとaccessModeSufficientの概念が導入されているっぽいですね。どの範囲の資料までこのフィールドが使用されるかわかりませんが、障害者用資料に限定されず、広範な資料にこのフィールドが使用されるようになると非常に大きいかも(「障害者用資料」という区分が良い意味で意味がなくなりますね)。注目したいと思います。

 見つけられないコンテンツはそのユーザーにとって存在しないと同義です。必要な人に必要な時に自分が利用できるコンテンツが発見できる、を実現するためには、アクセシビリティメタデータの提供が欠かせません。というわけで、アクセシビリティメタデータの情報はまめに収集してこのブログでもエントリを書いて行きたいと思います(このブログでも「アクセシビリティメタデータ」のカテゴリを新設)。

EPUB, Metadata, アクセシビリティ, アクセシビリティメタデータ, 電子出版, 電子書籍

アマゾンがバリアフリーDVD/Blu-Rayのコレクションを追加

2018-12-08 kzakza

 特定非営利活動法人メディア・アクセス・サポートセンターのfacebookで知りましたが、、アマゾンがバリアフリーDVD/Blu-Rayのコレクションを追加していました。

  • Amazon.co.jp: バリアフリーページ: DVD
声ガイド(副音声)や字幕スーパー付のバリアフリー対応のDVD・ブルーレイを集めたアマゾンのコレクションのスクリーンショットです。
Amazon.co.jp: バリアフリーページ: DVD

 これは以前からかもしれませんが、個々のDVDのページにもバリアフリーに関するメタデータも提供されています。以下は、「5パーセントの奇跡 ~嘘から始まる素敵な人生~ Blu-ray」のメタデータ。

登録情報欄のスクリーンショット。出演者、監督、形式、言語ともに、「バリアフリー字幕: 日本 バリアフリー音声ガイド: 日本語」の情報が提供されている。
登録情報に提供されているバリアフリー情報

 しかし、コレクションとして、バリアフリーDVDができたことまではよいのですが、「バリアフリー音声ガイド」、「バリアフリー字幕」がついているもの、それぞれで絞り込めないところがかなり残念。利用層がかなり異なるので、使いたい人はどちらかで検索したいはず。

とはいえ、今回のアマゾンの対応は、バリアフリー情報を収集しているという点も含めて、とても素晴らしい取り組み。

 私が図書館の人間だからということもあるけど、図書館側でもなんとかできなかったのかなという若干悔しい気持ちにもなったりも。バリアフリーDVDを絞り込んで探し出せないという問題は、つまるところ、メタデータに由来する問題でもあるので、メタデータの重要性を知悉している図書館で取り組めることもあるはず。

※2018/12/9追記  メディア・アクセス・サポートセンターの川野浩二さんがこれについて、以下のようにツィートされていました。「日本映像ソフト協会の働きかけで呼称の統一を行って実現できたもの」とのこと。「アクセシビリティメタデータを提供する、ということ」でも書いたことがありますが、バリアフリー対応DVDについては、対応したこと示すメタデータの記述が統一されていないことが検索時に、絞り込むができない大きな原因になっていました。これが業界の働きかけで統一できたことはすごく大きい。これの波及効果の大きさを考えると、単にアマゾンでコレクションができたことより、こちらのほうが大きいかもしれません。アマゾンだけではなく、レンタルビデオ、動画配信サービスなどの映像を扱う商業の各種データベースへの波及されていくことが期待できますし、DVDを収集する図書館が作成するメタデータにおいても記述されることが期待できます。

これは、業界団体である、日本映像ソフト協会の働きかけで呼称の統一を行って実現できたものです。もちろんAmazon以外の販売サイトでも同様のボタンが設置されていくと思います。

— 川野浩二[MASC] (@npomasc) December 9, 2018
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OPDSの動きが再び活発になってきた(主観)のでアクセシビリティメタデータをのせる夢がみられるか

2018-11-04 kzakza

 OPDS (Open Publication Distribution System)という電子書籍のメタデータをRSSに近い仕組みで公開する規格というか、仕組みがあります。JEPAがわかりやすく解説を書いています。

  • JEPA|日本電子出版協会 OPDSとは?

 この規格については、私も2011年から2013年にかけて、OPDS 1.1の日本語訳を公開したり、ブログ(前身のブログ含む)で積極的に紹介するなどして、かなり推していた仕組みなのですが、残念ながら十分に普及するに至っていません(推していた理由はこのエントリあたり)。日本でも、2012年ごろ、電子書籍クラスタの間でも盛り上がったりもしたのですが。
 ところが、米国のOPDS関係者のメーリングリストを久しぶりに見てみると、2016年でほぼ止まっていたやり取りが今年の3月くらいから少しずつ再開し、6月から月1回の電話会議も開催されているよう。何が起きているのだろう。しばらく見ないうちに、OPDS 2.0のドラフトが公開されたりして。

  • [drafts]OPDS Catalog 2.0| Contains all the current drafts for the OPDS specifications

 
 2.0になって、AtomベースからJSONベースになっている。Readium Web Publication Manifestをベースにしているとのことですが、電話会議のEPUB4とも呼ばれることのあるWeb Publicationsを意識したものらしく、なるほどという感じ。デジタルアーカイブの国際規格IIIF (International Image Interoperability Framework) が次のバージョンで、画像だけではなく、テキストなどにも対象を広げるという話があるので、IIIFのmanifestに期待しているところもあったけど、いずれにしても、manifestに集約されていくのか。妙に感慨深い。
 2013年以降で、OPDSに関する米国で大きな動きとしては、New York Public Library が10の図書館と、Library Simplifiedというプロジェクトを2015年に立ち上げて、これがOPDSを採用しているらしい。Library Simplifiedは、OverDrive、3M、and Baker & Taylorといった複数の電子書籍ベンダOPDSが提供する電子書籍を統合的かつシンプルな手順で利用者に提供するプラットフォームの構築を目指すプロジェクトで、プラットフォーマごとに分担されて利用者に一元的に提供しづらいという、図書館にとっても電子書籍の課題に真正面から取り組んでいて、OPDSを差し置いても興味深い動き。

  • Library Simplified
  • Library Simplified · OPDS
  • Library Simplified · Integration and Architecture
  • Library Simplified(American Libraries Magazineの紹介記事)

 OPDSの図書館のユースケースにあわせた拡張も検討しているらしい。

  • OPDS For Library Patrons · NYPL-Simplified/Simplified Wiki · GitHub

 Library Simplifiedは、あくまでユーザー側に配信するところで、OPDSを活用するようですが、EPUBにアクセシビリティメタデータを搭載することもできるので、それをそのまま流用して、出版社がOPDSとしてアクセシビリティメタデータを公開することができないのかでしょうか。それをアグリゲータが収集して統合的に検索できるようにしたり、DAISY再生環境やEPUBの再生環境でアクセシビリティを検索条件に直接検索できることができればと考えて、理想的なような。
 アクセシビリティメタデータについて、昨年、以下のエントリを書きました。以下のエントリを書いた想いとしては、(OPDSでもmanifestでもよいのですが)出版社にかぎらず、電子書籍を製作するに個人や機関が負担のない方法で標準的な形式でメタデータ(アクセシビリティメタデータを含む)を公開する、それをアグリゲータが収集して統合的に検索する、EPUBやDAISYの再生環境でアクセシビリティ上の要件も検索条件として検索して自分が利用できるコンテンツにたどり着ける未来を引き寄せたい、というのがあります。引き寄せたい。

  • アクセシビリティメタデータを提供する、ということ

 いずれにしても、OPDSについては、2010年頃から議論が始まっていますが、盛り上がったときもあれば、低調だったときもあったのではないかと思います。8年以上、コミュニティを支え続けているFeedBooksのHadrien Gardeur氏をはじめとするOPDS関係者には敬意を表したい。

EPUB, Metadata, OPDS, アクセシビリティ, アクセシビリティメタデータ, 電子出版, 電子書籍

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