コンテンツへスキップ
  • Archives


kzakza

カテゴリー: Metadata

MARC 21に追加されたアクセシビリティメタデータ項目 その1- 言語情報 041 フィールド

2019-01-08 kzakza

 2018年11月に書誌データフォーマットMARC 21 (参考: MARC 21 とは)にアクセシビリティに関するメタデータを記述することを想定した項目が既存項目の変更又は新設という形で追加されました。

  • 041 – Language Code
  • 341 – Accessibility Content
  • 532 – Accessibility Note
    何回に分けてMARC21に追加されたアクセシビリティに関するメタデータ項目について紹介します。

このエントリでは、言語情報を提供する項目である

  • 041 – Language Code

を取り上げます。

041フィールドの改訂概要

 041のフィールドは、上の名称にあるとおり、メタデータの対象となる資料について、コードという形で言語情報をを入力するフィールドです。041フィールド自体は以前からありますが、11月のMARC21の改訂でこの041のサブフィールド識別子が一部変更、又はサブフィールの新設によって、アクセシビリティに関する言語情報を入力できるようになりました。
改定前の041のサブフィールド識別子は以下のとおりでした。

Subfield Codes(2018年11月の改訂前)
$a - Language code of text/sound track or separate title  (repeatability code)
$b - Language code of summary or abstract  (repeatability code)
$d - Language code of sung or spoken text  (repeatability code)
$e - Language code of librettos  (repeatability code)
$f - Language code of table of contents  (repeatability code)
$g - Language code of accompanying material other than librettos  (repeatability code)
$h - Language code of original  (repeatability code)
$j - Language code of subtitles or captions  (repeatability code)
$k - Language code of intermediate translations  (repeatability code)
$m - Language code of original accompanying materials other than librettos  (repeatability code)
$n - Language code of original libretto  (repeatability code)
$2 - Source of code  (nonrepeatability code)
$6 - Linkage  (nonrepeatability code)
$8 - Field link and sequence number  (repeatability code)

これが2018年11月に以下のようになりました。$j が変更、$p、$q 、$rが新設されました。

Subfield Codes(2018年11月改訂後)
$a - Language code of text/sound track or separate title  (repeatability code)
$b - Language code of summary or abstract  (repeatability code)
$d - Language code of sung or spoken text  (repeatability code)
$e - Language code of librettos  (repeatability code)
$f - Language code of table of contents  (repeatability code)
$g - Language code of accompanying material other than librettos  (repeatability code)
$h - Language code of original  (repeatability code)
$j - Language code of subtitles  (repeatability code) ←変更
$k - Language code of intermediate translations  (repeatability code)
$m - Language code of original accompanying materials other than librettos  (repeatability code)
$n - Language code of original libretto  (repeatability code)
$p - Language code of captions  (repeatability code) ←新設
$q - Language code of accessible audio  (repeatability code) ←新設
$r - Language code of accessible visual language (non-textual)  (repeatability code) ←新設
$2 - Source of code  (nonrepeatability code)
$6 - Linkage  (nonrepeatability code)
$8 - Field link and sequence number  (repeatability code)

改訂の経緯と改訂の詳細

字幕の言語情報- サブフィールド識別子 “$j とサブフィールド識別子 $p

 改訂前までは、subtitlesとcaptionsの言語情報をサブフィールド識別子 $j にまとめて記述していました。

$j - Language code of subtitles or captions 

 
 subtitlesとcaptionsは、日本語で訳せば同じ「字幕」になるものの、subtitlesはナレーションやセリフの翻訳字幕、captionは、聴覚障害者に対する情報保障として字幕(セリフやナレーションだけではなく、背景の音や付随するBGMなどを説明した追加の文字情報も提供)であり、明確に区別されています。それが同じフィールドで記述することはどうなのか、という議論がありました。その問題提起を受けて、サブフィールド識別子$j は subtitle 専用のサブフィールド識別子に変更し、catpionの言語コードは新設されたサブフィールド識別子 $p に記述されることになりました。


$j - Language code of subtitles
$p - Language code of captions 

英語のビデオに英語の聴覚障害者向け字幕がついて映像資料は以下の形で言語コードが記述されます。

041	0# $a eng $p eng

音声解説の言語情報 -サブフィールド識別子 $q

 DVDや映画、テレビなどの映像にそれに付随する音声だけではわからない情景・場面・人物の動きなどの視覚情報を音声で伝えるものが音声解説(音声ガイドともいわれます)です。音声解説の言語情報について記述するフィールドがこれまでなかったため、サブフィールド識別子 $q が追加されました。

$q - Language code of accessible audio

英語に吹き替えられたフランスの映画で英語の音声解説がついたものは以下のように記述されます。

041	1#$a eng $h fre $q eng

手話の言語情報 – サブフィールド識別子 $r

 手話が本文言語に相当する主たる言語であるコンテンツであれば、本文の言語コードを記述するサブフィールド識別子 $a に記述することがかろうじて可能です。

$a - Language code of text/sound track or separate title

しかし、手話が本文言語ではなく、代替コンテンツとして提供されている場合に記述するフィールドがこれまでありませんでした。また、本文言語が手話である場合も、MARC Code List for Languages で用意されている手話の言語コードは、手話であることを示す sgnのみであり、その手話がどの地域/国の手話なのかを示す言語コードが用意されていない点が不十分であると指摘されていました。
 そこで、代替コンテンツとしての手話の言語情報を記述する想定で新設されたのが、サブフィールド識別子$rです。”visual language”としているのはなるほどですね。

$r - Language code of accessible visual language (non-textual)

各国で使用される手話の言語コードが規定されいるiso639-3の言語コードが使用される想定のようです。
主たる言語情報が英語であり、かつ代替コンテンツとしてアメリカ手話(American Sign Language: ASL)提供されている場合は以下のように記述します。iso639-3の言語コードとして、アメリカ手話aseが記述されています。


041 0# $a eng $r sgn
041 07 $r ase $2 iso639-3

 $rは代替コンテンツとして提供される手話の言語情報を記述することを想定したものであるため、本文言語として手話が提供されている場合には$rは使用できません。本文言語が手話である場合には以下のように記述します。


041 0# $a sgn
041 07 $a ase $2 iso639-3

 

参考

 以下のディスカッション・ペーパーとプロポーザルに議論の経緯やサンプルの書誌が多く掲載されています。

  • Discussion Paper No. 2018-DP02: Subfield Coding in Field 041 for Accessibility in the MARC 21 Bibliographic Format
  • Proposal No. 2018-02: Subfield Coding in Field 041 for Accessibility in the MARC 21 Bibliographic Format
  • MARC 21 Format for Bibliographic Data: Appendix G: Format Changes

関連エントリ

  • MARC 21に追加されたアクセシビリティメタデータ項目- その2 アクセシビリティに関する注記 532フィールド
  • MARC 21に追加されたアクセシビリティメタデータ項目 その 3 アクセスモード<利用するにはどのような能力が必要か> 341フィールド
  • アクセシビリティメタデータを提供する、ということ(その2)
  • LCからのMARC 21フォーマットへのアクセシビリティメタデータ項目追加の提案
EPUB, Metadata, アクセシビリティ, アクセシビリティメタデータ, 電子出版, 電子書籍

Schema.orgにアクセシビリティに関する語彙が追加された(その2)

2019-01-06 kzakza

もはや旧聞に属することですが、2017年3月にSchema.org3.2でアクセシビリティに関する以下の語彙が追加されています(すでにこのブログでは繰り返し触れている語彙ですが)。EPUB Accessibility 1.0(2017年1月公開)がSchema.orgの語彙を採用する形で以下の語彙を導入していましたが、順序としては、Schema.orgに正式に取り込まれる方が後だったのですね。

  • accessMode
  • accessModeSufficient
  • accessibilitySummary

それぞれの語彙の詳細は、すでにEPUBのアクセシビリティ仕様のエントリで書いたので、そちらを参照してください。この3つの語彙は、digital publishing communityとEpub 3.1 Accessibility Working Groupからの提案だったようです。EPUB Accessibility 1.0の検討と同時変更だったのですね。アクセシビリティメタデータの中でaccessModeとaccessModeSufficientの語彙は考え方としてかなり画期的だと考えていますが、この語彙が検討された経緯、もう少し調べてみたいですね。以下にリンクだけ掲載しておきますが、GitHubのスレを読めばよいのだな、たぶん。

  • schema blog: Schema.org 3.2: courses, fact-checking, digital publishing accessibility, menus and more…
  • リリースノート
  • Proposal of accessMode, accessModeSufficient, and accessibilitySummary properties for e.g. epubs · Issue #1100 · schemaorg/schemaorg · GitHub

関連エントリ

  • Schema.orgにアクセシビリティに関する語彙が追加された
EPUB, Metadata, アクセシビリティ, アクセシビリティメタデータ, 電子出版, 電子書籍

多くの公共図書館でたぶんすぐに始められる障害者サービス-バリアフリーDVDの提供

2018-12-232022-06-11 kzakza

 障害者向け資料の録音図書や点字資料、大活字資料などは意識して収集しないといけませんが、すでに所蔵している資料が障害のある方に提供できれば、その部分だけも「障害者サービス」をすぐに始められます。DVDが実はそれの可能性があります。
 
 多くの図書館でDVDを収集し、利用者に提供していると思いますが、最近のDVDは、視覚障害者向けの音声ガイドや聴覚障害者向けの字幕を提供していることが多くあります。特に聴覚障害者向けの字幕はかなりの割合でついているのではないかと思います。パッケージの裏側に邦画や日本で作成された映像作品で「字幕:日本語」と書いていれば、大体がそれです。
 2015年に書いた「テレビ放送のバリアフリー化(視聴覚障害者向け放送の普及促進)の状況について」で書いたように、テレビ放送で、バリアフリー化が進んでおり、それがDVD化されている場合はだいたいがついています。映画についても、UDcastが出てきて、映画公開時点ですでにバリアフリー化も進んできているので、それらがDVD化された際はバリフリーなDVDになっているはず。メディア・アクセス・サポートセンタの以下のページも参考になるはず。
映像バリアフリー情報 | メディア・アクセス・サポートセンター
 障害者サービスを意識なくても、収集したDVDがバリアフリーなDVDであるものが多くあるはずなので、すでに収集したDVDのうち、どれがバリアフリーなのかを調べておくだけでも、視覚障害や聴覚障害のある利用者に提供できるものがでてくるはず。一般資料に埋もれがちだけど、障害のある方でも利用できるという情報こそメタデータとして整備されているべきと思う私ですが。

参考サイト

  • メディア・アクセス・サポートセンター
    映像のバリアフリー化に関する情報が集約されています。

関連エントリ

  • テレビ放送のバリアフリー化(視聴覚障害者向け放送の普及促進)の状況について
  • アマゾンがバリアフリーDVD/Blu-Rayのコレクションを追加
EPUB, Metadata, アクセシビリティ, アクセシビリティメタデータ, 図書館, 障害者サービス, 電子出版, 電子書籍

投稿ナビゲーション

過去の投稿
新しい投稿
Proudly powered by WordPress |
Theme: tsumugi by youthkee.